slalom
スラローム

 飛燕 
– Hien –

★★★★★

《クロスと半回転を繰り返す有名なコンボ技》


飛燕 [Hien

ライダー  

使用ギア  

【POINT】

  1. 重心を乗せ換えて先行足荷重を続ける
  2. 『クロスからクロスへ』を意識する
  3. 前方の視界を常にキープする

スラロームを始めたら、きっと一度は名前を聞いたことがある技でしょう。フロントクロスとバッククロスができるようになったら、やってみたくなると思います。でも、なかなか思うように華麗に滑り抜けていくことができないのも、この飛燕。おそらくこの飛燕ほど有名で、多くの人がチャレンジし、かつ奥が深い技はないかもしれません。

この技の解説でよく言われているのが、『フロントクロス→オープンターン→バッククロス→クローズターン→フロントクロス…』の繰り返しです。しかし、これは忘れることをオススメします。『フロントクロスとバッククロス(正確にはアンチバッククロス)を繋いでいく技』と考えましょう。その理由は、オープンターンやクローズターンを意識するあまり、きっちり回ってからクロスに移ろうとして、パイロン1つ通過するごとに流れが途切れてスピード感0となり、ツバメの飛翔というよりペンギンやヒヨコの歩みとなってしまうからです。

まず先行足荷重となり、フロントクロスでパイロンを通過したら、足を開きながら後行足をつま先を軸にかかとを内側に入れてオープンのスタンスになります。スタンスになるだけで、回りません!しかし先行足にしっかり荷重していると、自然と足の向きを変えた後行足が先行足を追い抜いて行きます。そして元の先行足を楽にしてあげると、くるっと回って足の向きが変わり、上半身がねじれたバッククロスの形、つまりアンチバッククロスになると思います。

オープンスタンスの後、しっかり進行方向のパイロンを見続けるようにして、アンチバッククロスになっても顔が後ろを向かないように注意してください。進行方向のパイロンを常に見続けます。ここで頭が回ってしまうと、バッククロスの後にどっちに回ったら良いかわからなくなったり、そもそもこのバッククロスがアンチバッククロスにならず、スムーズに次の(前へ向き直る)動作ができなくなります。頭がどうしても回ってしまう場合は、バッククリスクロスやアンチバッククロスを練習した方が、早くきれいな飛燕ができるようになると思います。ひとつコツらしきことを言うとすると、大きなクロスをするようにすること。膝が曲がって腰が落ちて肩や首が回りやすくなって、その結果、肩越しに前方の視界をキープしやすくなります。

アンチバッククロスでパイロンを通過したら、上半身のねじれを解消させるように下半身を回していきますが、ここが最も厄介で、また個性も出るポイントです。ただ、はっきり言えることは、『クローズターンで回らない』こと、両足の中心に重心を置いたつま先合わせの扇形を作って回るのはNGということです。必ず、アンチバッククロス時の後行足=ターン時の先行足に荷重をして(腰から上を乗せる感じで)半回転するようにします。動画の39〜41秒あたりでは後行足のかかとが大きく浮いていることから分かるように、先行足に100%荷重をして(重心を乗せて)います。飛燕は両足とも全輪接地が基本ですが、実際はこのくらい極端な荷重をしてパイロンを巻きながら前を向くようにしています。

ターンの先行足がパイロンを越えたら動きを一瞬止めて、後行足が斜めに追い抜いて行くのを待ちます。そして先行足が入れ替わる瞬間に、新しく先行足になった方の足に荷重します。そしてフロントクロスの形を作るのですが、おそらく自然と足がフロントクロスになっていると思います。この後は左右が入れ替わりつつ、パイロン4個分が1セットとなった繰り返しの動作が続いていきます。

さて、アンチバッククロスからフロントクロスに至るまでの、2連続の荷重の入れ替え=重心の乗せ換えがうまくできると、減速することがないどころか、加速するようになるはずです。飛燕は元々、クロスと半回転を繰り返しながら加速するように設計された技で、特に後ろから前に向く一連の動作が加速ポイントとなります。

また、この『加速』をキーに話をすると、動画では、パイロン進入直後のオープンターンをする時だけ、フロントクロスの後行足を前に移動させて加速させるようにしています。今、あまりこの部分を気にかけている人はいないと思いますが、この飛燕を作った梁川さんの『加速』に対するこだわりの動作だと思います。

それから、アンチバッククロスからフロントクロスになるまでの、俗に言うところの『クローズターン』の部分は、動画の49〜53秒あたりのように、1つ1つの足の運びをしっかり止めるスタイルもありますし、足を止めずに小さなターンをするように回るスタイルもあります。足を止めた方が重心移動と同時に蹴ることもできるのでグイグイと加速させることができますし(オリジナルの梁川さんもこのスタイル)、足を止めなければ高速で滑っている中に入れることに向いているでしょう。どちらが良いor悪いではなく、好みや自分の目指すスタイルの問題だと思います。