column
コンシエルジュの閑話休題

【 第53話 | 2015.11.5 】

初めてのインソール交換

インソール、そう、ブーツの中に入っている中敷きのことです。

ウィールやベアリングほど気にする人が少ないのだけれど、このインソールはブーツの操作性に極めてクリティカルな影響を与えるギアだったりする。

それにも関わらず、インラインスケートのブーツを買った時に最初からブーツの中に入っているインソールは、オマケ程度のペラペラなものであることが多い。『ブーツを買ったらインソールは自分のものと入れ替えると思うけど、購入直後に滑る場合もあるだろうから、とりあえず何か入れておくね』的なものなのだ。

しかし、そうとは知らずに、その『とりあえず何か』といった感じのインソールをそのままずっと使っている人も多いのではないだろうか。それでは自分の滑りやブーツのパフォーマンスを100%引き出していないも同然! 今すぐスポーツ用のインソールを購入して入れ替えて欲しい。

入れ替えを薦める理由として、自分の足に合ったインソールを入れると、まずブーツの中で足が泳がなくなる。多少バックルや靴ひもが緩くても、インソールの上で足が動かないのだ。つまり力が逃げることがなく、しっかり踏んで荷重&加重ができる。

そして無駄に足裏で踏ん張ったり、足の指を曲げて変な力が入ったまま滑ることもなくなるから、足裏の負担が減るので足の疲れが軽減する。さらに足裏が釣ったり痛くなったりすることが減ったり、なくなったりもする。

また、土踏まずのアーチをしっかり形成してくれるものであれば、ブーツを成形しなくても足が本来のベストな形に近付くので、ブーツの中での当たって痛くなる箇所がなくなることもある。

本当に良いことずくめなのだ。

さて、インソールを購入しようとスポーツ用品店に行くと、いろいろな種類があってどれを買ったらいいのか分からないかも知れない。もちろん、店員に聞けば良いのだが、その店員がインラインスケートをやったことがない可能性が高い。そこで僕なりの大まかな指針を。

スラロームやスピードがメインであるのなら、クッショニング機能がない方が良い。一方、アグレッシブなどで高所から着地することが多いのなら、かかとなどにクッションがあった方が怪我の防止になるだろう。

さて、なぜクッションがない硬い方が良いかというと、その方が足裏からの力がダイレクトにフレームやウィールに伝わりやすいからだ。ところがクッション素材が使われていると、自分が掛けた力の一部を吸収されてしまうだけでなく、力を掛けた時に柔らかいクッション素材がぐにゅっと変形して、足裏が不安定な状態になり、的確なエッジ操作が難しくなったり、体のバランスが取りにくくなるなど、滑りに悪影響が出てくるからだ。

だから、インソールは力の伝達効率が良い、できるだけ硬いものを選んだ方が良い。例えば比較的入手しやすいものだと、SIDASやSuperfeetのなど製品だ。

もう少し商品を絞っていくと、最も汎用性のあるもの、あるいはスキー用から選択すれば、基本的には問題ないだろう。その中で、ブーツがタイトだからできる限り薄い方が良いとか、多少厚くてもサポート力が高いものが良いなど、好みに応じて選べば問題ない。ちなみに、CCMのCUSTOM SUPPORT FOOTBEDやSuperfeetのYELLOWなどスケートブーツ用のインソールも販売されているので、何を選んだら良いのかわからない場合はそれらを選択するのも悪くない。

フィット感や性能は値段なりだと思って、ほぼ間違いない。

僕自身の例で言うと、SIDASの3,000円代の廉価版(3Dシリーズ)は自分の足に合わなかったが、同じSIDASのインソールでも6,000円以上のもの(FLASH FITシリーズ)であればフィットしている。とは言え、低価格帯のものが全て悪い訳ではないので、できるだけ店頭で試した上で、予算の中でベストのものを選ぶと良いと思う。

もちろん熱成形すれば、最高のフィット感が得られる。普通のインソールは自分の足裏と形がぴったり合致することはないから、ある形状をした板の上に足を乗せている感覚がある。しかし自分の足型に熱成形したインソールは、当コラムの第29話第30話に詳しく書いたが、本当に自分の足に吸い付いてるような感覚で、足裏にまったくストレスを感じず、最高に快適なのだ。お金に余裕があれば、ぜひ試して欲しい。

ただし、熱成形したインソールに慣れてしまうと、既製品のインソールでは土踏まず部分の突き上げが物足りなくなってしまい、普段履き靴やスニーカーにも熱成形のインソールを入れたくなるという、経済的デメリットが発生する場合があるので、この点だけは要注意となります。(笑

《高田健一》

ライター