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コンシエルジュの閑話休題

【 第51話 | 2015.8.27 】

初めてのベアリングのメンテナンス《日常編》

ウィールをフレームから外すと、そのウィールの真ん中にはまっているドーナツ型の金属製パーツがベアリング。1個のウィールに2個のベアリングがはまっていて、ブーツ1足につきウィールが左右全部で8個だと、ベアリングは16個ついていることになる。

そしてこのベアリングが、滑りのスムーズさや加速性に大きく関わってくる、小さいけれど重要なギアとなる。

インラインスケート用のベアリングはメンテナンスという角度から見ると、内部を保護するドーナツ型の薄い板のパーツであるシールドの種別によっておおまかに3種類に分けられる。

 

【両面鋼板シールド】

ベアリングの両側が金属製のシールドで覆われていて、どちらの面からも内部が保護されているもの。この両面鋼板シールドのタイプにも、実はシールドの固定の違いでさらに2種類あり、メンテナンスの際にシールドを外す方法が異なる。また、内部のリテーナー(保持器=ボールを一定間隔に固定する部品)は金属製で取り外しができない。

まず、シールドの外周に7〜9カ所くらいの切れ込みがあるタイプは、内輪とシールドの間に細めの千枚通しや精密機械用の細いマイナスドライバーなどを差し込み、シールドを持ち上げるようにしながら外す。このタイプは、一度シールドを外すと再度取り付けることができない。そのため、インラインスケートで使う場合は、必ず片面のシールドは残したままにしておかなければならない。

もうひとつはシールドの外周に切れ込みがなく、外輪の溝にCリングというC型の細いパーツでシールドが固定されているタイプとなり、Cリングが切れている隙間に千枚通しやクリップなどの先を差し込み(うまく入らない場合は差し込む向きを逆にしてみる)、そのまま外周に沿ってくるっと回していくとCリングが外れ、シールドも外せるようになる。こちらはシールドの再取り付けが可能だ。

【片面鋼板シールド】

片面だけ金属製のシールドがついているもの。

これはすでに片面が開いているので、シールドを外す手間がない。通常入手できるこのタイプはスケート用のものが多いため、リテーナーが樹脂製で取り外しができることが多い。

【ゴム板シールド】

両面あるいは片面がゴム製のシールドで覆われているタイプで、高品質なスケート用ベアリングで採用されていることが多い。リテーナーが樹脂製で、このリテーナーも取り外しできる。

このタイプも内輪とシールドの隙間に小さなマイナスドライバーなどの先を差し込ませて、シールドを持ち上げるようにして外す。ただし、このタイプの大部分は片面シールドなので、シールドを外す場合は洗浄時になると思うので、リテーナーを外した後に裏から綿棒などで押すと簡単に外れる。どちらにしても乱暴に外すと、ゴム板の芯になっている金属板がぐにゃりと曲がるので、外す作業は丁寧に。このゴム板シールドは軽く押すだけで再びシールドが取り付けられるので、簡単にシールドもリテーナーも外して洗浄ができるなど、メンテナンスがしやすい。

 

さてこのベアリング、普段はフレームにその大半を覆われて隠れているとはいえ隙間もあり、また地面から3〜4cmくらいの所に位置するため、路面上のホコリやウィールの削りカスなどが必ず付着する。これを放っておくと、これらの極小のゴミが部品と部品の隙間からベアリングの内部に入り込み、徐々に回転のなめらかさが失われていく。すると加速や速度維持の性能が落ちていき、なかなかスピードが出なかったり、滑る一歩一歩が重い感じになっていく。

さらに、ベアリング最大の敵『水』が中に入ると、錆びの原因となる。一度錆びてしまうとガリガリとした回転となり、スムーズさが一気に失われてしまう。最悪の場合、錆び付いたパーツ同士がくっついてしまい、まったく回らなくなってしまう。

そこで、できるだけ小まめにベアリングを外して汚れや状態をチェックし、同時に表面のホコリや汚れをティッシュや綿棒や歯ブラシで落としてあげる。この時、部品と部品の隙間から表面の汚れを中に押し込まないように注意すること。そして、オイルは抜けていないか、ゴリゴリとした感触はないか、手で軽く回して状態を確かめてみる。

オイルが抜け切っている時は、ウィールから外したベアリング単体を勢い良く回すと、だいたい「シャーー」という音がする。この場合はシールドを外したりして、ベアリング内部にオイルを1〜2滴注してあげる。両面シールドのベアリングで片面を外すのが面倒な時はシールドの上にオイルを1滴垂らし、指でグリグリ回しながら内輪とシールドの隙間から内部にオイルが入っていくようにする。

また、オイルは残っているけれど、中にホコリなどが入り込み、勢い良く回すとガーガーと音がして、ゴリゴリした感触や抵抗を感じる場合、本来なら洗浄した方が良い。しかし内部の汚れが軽度だったり、とりあえずの応急処置をする場合は、オイル抜けの時と同じくオイルを注し、しばらくベアリングを回して余分なオイルと一緒にホコリなどもベアリングの外に出すようにする。洗浄した時のようにクリーンにはならないけれど、ガリガリとした感じは軽減するはず。かなり汚れていると思われる場合はオイルを多め(2〜3滴程度)に注すと、流れるように汚れが出てくるだろう。

なみに、ベアリングをウィールから外す方法として、六角レンチなどで押したりテコのように使ったりして取り出すこともできるが、NiNjaのスターツールなどのベアリングを外す機構を持つツールを使用した方がスマートだ。

さらに楽チンなのが、通称『ガッチャンコマシーン』と呼ばれている、NiNjaのベアリングプレス機を使う方法だ。ほとんどのブーツで採用されている8mmシャフトが使用されている場合、ベアリングの取り外しと取り付けがレバー1本の操作で軽くでき、どんなに堅くはめこまれているベアリングも、これさえあれば幼稚園児でも外せるくらいかなり優秀な器具だ。使い方はS-FOURのサイトのアフターサポートのページ(http://s-four.jp/shop/support_m01.shtml)で詳しく紹介されている。税抜きで4200円と少々お高いが、インラインスケートを続けていくのなら、一家に一台あって損はないと思う。

このような日常的なメンテナンスを丁寧にしていても、できる限り良い状態をキープして同じベアリングを使い続けていこうとする場合は、どうしたってベアリングの洗浄から逃れられません。

そこで、次回は『ベアリングの洗浄』の方法などを説明していきます。

《高田健一》

ライター